どこかの図書館

主に本と音楽の紹介しています。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

今回は伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』を紹介していきます。 伊坂さんの作品には登場人物が理不尽な状況に巻き込まれていくことが多いです。勝手に犯人に仕立て上げられたり、知らず知らずのうちに権力に絡め取られたりしてしまいます。 この作品で…

そこに在るということ 西加奈子『きいろいゾウ』

ある夫婦が愛とはなにかを見つけていくお話。今回紹介する作品は西加奈子さんの小説『きいろいゾウ』です。 田舎に越したある夫婦の小さな日常の物語。物語前半は都会から離れた田舎でのスローライフがゆっくりとユーモアたっぷりに進んでいきます。日々語ら…

体験しえない感情への郷愁 Arcade Fire『The Suberbs』

カナダはモントリオール出身のインディーロックバンド、Arcade Fireの『The Suberbs』というアルバムの魅力をお伝えしていきたいと思います。 このアルバムの魅力を一言で言うなら郊外への郷愁です。 都市から少し離れた場所、場所を構成する要素が主に家庭…

顔を取り外す小説 西加奈子『ふくわらい』

小さい頃に福笑いをしたことがあるでしょうか。目が見えない状態で顔を組み立てるあの遊び。その福笑いに取り憑かれた女性が本作の主人公です。 作家は『サラバ』や『i』などで知られる、イランはテヘランの生まれ、大阪育ちの作家西加奈子さんです。 生い立…

アドラー心理学『嫌われる勇気』を読んで

哲人と青年の対話形式で行われる、アドラー心理学をわかりやすく説明した『嫌われる勇気』が200万部の出版を突破しました。国民総アドラーの時代も近いのかもしれません。 私もこの本を読み衝撃を受けた1人です。特に、「課題の分離」という考え方が刺激的で…

村田沙耶香『コンビニ人間』を読んで

クレイジー沙耶香たる所以を垣間見た。この作品の1番の感想はそれでした。全く人の心が読めない主人公に読者を惹き付け、魅力すら感じさせてしまう手腕。実は作者自身がこの主人公なのではないかと思わせる、そんな作品でした。 現に、村田さんのインタビュ…

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』を読んで

薄曇りの青春群像劇を描かせたら辻村深月さんの右に出る作家は居ないんではなかろうか。そう思わせるほどの出来でした。高校生たちの関係性を多面的にかつ内省的に見事に書ききった作品だと思います。 しかも、これが第1作というのだから驚きです。 2018年に…