どこかの図書館

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村田沙耶香『コンビニ人間』を読んで

 クレイジー沙耶香たる所以を垣間見た。この作品の1番の感想はそれでした。全く人の心が読めない主人公に読者を惹き付け、魅力すら感じさせてしまう手腕。実は作者自身がこの主人公なのではないかと思わせる、そんな作品でした。

 現に、村田さんのインタビューでも未だにコンビニバイトを続けていて、バイトに入った日でないと筆が進まないと仰られていました。なるほど、、主人公とリンクするところはある程度あるのか、、、。

 この作品を読んで痛切に感じさせられるのは、自分たちを「普通」とみなしている人達の圧倒的な同調圧力。常識、普通、通常などの単語で示される行動様式が通じない人に対してどれだけのプレッシャーを与えているのかを思い知らされました。

現代は相対主義の極地とも言われていますが、その相対主義を支えているのが実は同じものさしであるということを巧みに描いていました。

そして、その描き方がコンビニという即物的で具体的なものを通して描かれているので、ポップで読みやすく、理解しやすいように思いました。

現代のものさしを上手く打ち破ってくれるそんな作品です。村田さんのクレイジーさにやられたい人は是非。

【第155回 芥川賞受賞作】コンビニ人間

【第155回 芥川賞受賞作】コンビニ人間