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辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』を読んで

 薄曇りの青春群像劇を描かせたら辻村深月さんの右に出る作家は居ないんではなかろうか。そう思わせるほどの出来でした。高校生たちの関係性を多面的にかつ内省的に見事に書ききった作品だと思います。

しかも、これが第1作というのだから驚きです。

 2018年に本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』と対をなすような作品でもあるように感じられました。ただ、『冷たい校舎の時は止まる』の方が視点を分け、登場人物たちの抱える人に言えないような、中村文則風に言えば泥濘の部分に触れることに成功しています。

 もちろん、8人の登場人物ごとに視点が変わるので目まぐるしさは確かにありますが、その視点が徐々にまとまっていく感覚は気持ちよく、最後の方にはページを繰る手が止まりませんでした。物語終盤の仕掛けのページも国語のテストをしているようで楽しかったです。ただ、正解はしませんでしたが。。

 そんなに作品数を読まず『かがみの孤城』こそが辻村作品の至高だと考えていましたが、見事に打ち砕かれました。

高校生たちのややスノーウィーな青春群像劇を読みたい方、オススメです。

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)