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伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

今回は伊坂幸太郎さんの小説『フーガはユーガ』を紹介していきます。

伊坂さんの作品には登場人物が理不尽な状況に巻き込まれていくことが多いです。勝手に犯人に仕立て上げられたり、知らず知らずのうちに権力に絡め取られたりしてしまいます。

この作品でも理不尽な状況というのは見られて、それは父親からの暴力です。双子の主人公は恒常的に父親からの虐待にされされています。そして、その状況から逃れようとして、ある日、双子間で起こる不思議な力を手に入れるというお話。

不思議な力といっても超能力のスーパーパワーでなんでも解決できるわけではありません。それ自体は工夫しないと不便なものにしかならない力だったりします。

しかし、登場人物はあの手この手で特別な力を活かそうとします。ここに伊坂さんの登場人物を魅力的にする魔法が隠れています。工夫する姿を通じて双子がどんどん立体的に親しみやすく感じられていきます。

また、その力を持ってしまったら起こる弊害や施すことの出来る素敵な仕掛けなど、この力を伊坂さんが持っていたのではないかと思わせるほど自然に力を描写しています。

こんな力があるのかもしれないし、あったらいいな、もしあったら素敵だなと、思わせられること間違いなしです。

 

伊坂作品に多い伏線や物語があるとこに落ち着いていく感覚を本作も味わうことができます。少しづつ話が見えてきたと思ったら裏切られる心地良さは健在です。

不思議な双子と出会いたい方は是非。

フーガはユーガ

フーガはユーガ