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精緻なジグソーパズル 伊坂幸太郎『PK』

今回は伊坂幸太郎さんによる小説、『PK』を紹介していきます。

この作品のキーワードはパラレルワールドです。3つの短中編で構成されていますが、その作品どうしが絡み合いある世界を構成しています。

伊坂さんの作品にしばしば見られる全体の見えない権力の描写や、不思議な力を日常的に描く手法などがこの作品でも見られ、一見、とても伊坂的作品であると思えます。

しかし、そうは問屋が卸さず、全体を俯瞰してみるとメビウスの輪のように繋がっています。1箇所に収縮していく既存のスタイルとは少し違った作品の落とし方と言えるでしょう。

とは言え、私自身全てのギミックを解き明かしたとは言えないので、もしかしたら全てがおさまるべきところに収まっているのかもしれません。

その全てを割りきれない作品の遊びとも言える部分が伊坂的ではなく、目新しい感じを受けます。(作品自体は2011年頃に書かれました)

ただ、キャラたちの会話はテンポがよく、軽快な比喩はユーモアがあってそれだけでも十分に楽しめます。

精緻な作品を解き明かしていきたい方、キャラたちの会話でニヤニヤしたい方は是非オススメしたいです。

PK (講談社文庫)

PK (講談社文庫)